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ロカール探偵がゆく

第4話 建築家 上遠野克さんが語る「家具のありよう」。

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上遠野建築事務所でのインタビューは、
ロカールとは少し離れて家具談義に発展。
建築家から見た「建物と家具の関係」「家具に求めること」など、
カンディハウスにとっても、大変興味深いお話です。
思わず聞き入るロカール探偵。

 

─── カンディハウスの家具をたくさん使ってくださって(事務所を見回す)。

克さん
キャビネットも全部特注だと思うよ。このコートスタンドもそうじゃないかな、たぶん。

 

─── ホントですか!
カンディハウスには珍しいデザイン...。

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キャビネットは、経年とともに木目が浮き出て、表面が" うづくり" のようになっている。

 

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事務所の入口にさりげなく置かれていた。ポールもフックも無垢材。

克さん
面白いでしょ?ところでロカールだけど、その頃住宅設計を手掛けていた建築家に当たってみたらどうかな?
渡辺武信、倉本龍彦、室伏次郎など、横のつながりを探るの。
1968 年に植田実(まこと)さんを編集長に創刊した「都市住宅」が、盛んに若い建築家の特集をしていた時代だね。
その頃の若手はみんな、自分の設計した建物に入れる" いい家具" を探していたから、旭川にも見に行ってたはずだよ。

 

─── 東京にも海外の家具がたくさんあったのでは?

克さん
もちろんそうだよ。
青山に「ハーマン・ミラー」があったし、「モビリア」を覗けばイタリアの椅子だってあったけど、
そんなの1店1店見て回る時間がない。
それが「ハルク」にはル・コルビジェからマルセル・ブロイヤーまで、全部ちゃんと並べられていた。
そんなところはほかになかったから、建築家はよくお客を連れて行っていたよ。
1脚6万円とか10 万円とかそんな値段だったけどね(笑)。

 

─── そんな中に、ロカールが並べられたのですか。

克さん
そういうこと。
建築家は建物と違うテイストの家具を置かれたくないから、
「こういう家具を入れたら合うな」とインテリアセンター(カンディハウスの前身)の製品を見て思っていたんだろうね。
この事務所を見ても分かる通り、父は北欧の家具に関心があったんだよ。
自宅にも、やさしくて軽くて、白い木とファブリックが北欧っぽい家具があった。
サイズもコンパクトで、むしろ日本人に合ってたのかも知れない。
その頃のインテリアセンターのものは、北欧テイストが中心だったでしょう。
重心が低めで、靴を脱ぐ日本の住まいにちょうどいい。
そのあたりで父と長原さんは波長が合ったのではないかな。

 

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─── 確かに長原相談役がデザインした椅子は、座が広く重心が低いものが多いですね。

克さん
だから父はお客にもずいぶん勧めて入れていたらしい。
当時のインテリアセンターの家具づくりは、技術はドイツ、デザインは北欧、
そしてファブリックで旭川っぽさが加わっていたのだろう。

 

─── そういえば、ソファーが見当たりませんね。

克さん
キライなの(笑)。
固定性があるから空間が硬くなって使い方も限定される。
お父さんがごろ寝するだけの場所になったりするでしょう。それに「上座」ができちゃうのも、ね。
一方椅子は、単体でもいいし、6脚とか8脚並べても軽さがある。
空間を家具で占有される感じはないし、デザインが揃っていなくても成り立つ点も好きなんだ。

 

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円卓のまわりに並ぶ、インテリアセンター時代の「コネリア」。
「ニュートラルなデザインだから7脚あっても軽快でしょう?」

 

─── 克さんも、設計した住宅に家具を提案するのですか?

克さん
少なくとも、施主さんに家具のテイストを伝えておくようにはしている。
ただね、内装まではご主人の意見も取り入れられるんだけど、そこに「置くもの」になるととたんに奥さん主導!(笑)
しかも多くの場合夫婦の好みがめちゃくちゃ違うの!
インテリアで重要なのが家具と照明なんだけど、特に照明が悩みなんだ。
なぜなら、部屋全体隅々まで明るくしたい人がとても多いから。
最後にそれやっちゃうと、空間に綾(あや)がなくなってしまって、
夜の外観写真なんて絵にならないからまず撮れないね。

 

─── そんなに違うものですか。

克さん
もっと違うのがカーテン。
ここで間違うと、建物と家具までよくてもアウトだから、
僕はいつも設計の途中で「照明とカーテン代は取っておいてください」とお願いするんだ。
カーテンについては、1軒分で100 万円とか、値段もけっこうするので一緒に行って選ぶこともある。
そういう意味では、あまり情報や選択肢のない父の時代の方がやりやすかったかもね。
そもそも住宅の設計を建築家に頼む人が少なかったし、そういう人は全部任せてくれていたから。

 

─── 克さんにとって、いい家具とは?

克さん
きちっとできていてロングセラーで、買い足していけるものだね。
質を維持し続けて、それが定番でいつでも手に入り、何年後でも買い足せるもの。
そういう意味で、長く残っているものはいい家具だと思う。
住宅も同じで、斬新さよりもデザインの賞味期限が長いことが大事。
だから僕は「新築なのに10 年前からそこに佇んでいたような家」と言われたい。
家具の「ありよう」も、新製品なのにずっと前からあったようなものが理想だね。
そこに「ものに対する信頼感」が生まれる。
僕の設計した家の中のものも、そうあってほしいと願っているんだ。

 

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カンディハウスでいうと、例えばボルスかしら・・・

─── 探偵業は儲かりません(笑)。 いい家具を買えない人はどうすれば?

克さん
お金がなければ、安くても無垢のものを選びなさい。
張りものをやめてね、表だけってのイヤじゃない。
傷ついたとき、中まで同じだと安心でしょう?傷んでも味があるし。
家も家具も、新品のときがいちばんいいわけじゃないんだよ。
木の黄ばみとか、朽ちていくのが味になる。使われてなんぼなんだから、
本物の素材、本物のテイスト、本物のデザインを選ぶことだね。

 

─── 新品がいちばんじゃないのは、カンディハウスが取り組む「ヴィンテージ事業」の精神にも通じます。

克さん
そうそう。古くなっても直せて、ふたたび愛されていくのは素材がいいから。
そうして使い続ける年月がさらに愛着を育てる。
そういうことを使う人と一緒になって考えながら、家具をつくらないといけないと思う。
つくり手と使い手が、使い方のイメージまで共有できたら最高だね。

 

─── 今カンディハウスでは、札幌の地下歩行空間のイベントでヴィンテージ家具の販売を考えています。

克さん
いいんじゃない?ヴィンテージは服でもオーディオでも人気があるものね。
そうだ、大通あたりでバーでも開かない?

 

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local3_img08.jpg─── バーですか! ヴィンテージ家具のバー...♡

克さん
1970 年代にね、八重洲にあったんだよ、本物の家具とふれあえるバーが。
北海道にも大人の文化をつくっていこうよ!
(3人、バーの話で盛り上がる)。

 

※このインタビューは、2014 年1 月11 日に札幌・上遠野建築事務所にて行いました)

 

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インタビューの後、南部医院へ車を走らせ、ちょっとだけ敷地内を拝見。
上遠野徹氏設計の、鉄骨が特徴的なお宅です。
「窓から覗いても見えないよ。リビングは2階だから」と克さんがおっしゃっていたので、
これ以上の捜索は諦め、ロカール探偵は帰路についたのでした。

 

 

~第5話につづく~

 

次回は、ロカール探偵プロジェクトチームのweb 会議に密着!4月上旬アップの予定です。